カゴメカゴメ

中学生の頃だった。父に叱られ深夜家を飛び出した。街灯もない暗い夜道を恐さも感じず泣きながら歩いた。 ようやく涙も渇き心細くなってきなころ、隣街の灯りが見えてきた。 ホッとして駆け出したそのとき、道の真…

希望

何かが俺を見ている 風か流れる雲か 何かが俺に声をかけ そのくせすぐ遠ざかっていく 俺は生きているんだ そう思わずにはいられない ああ 赤く燃える夕日 いつまでも いつまでも 照らしておくれ

貧乏学生のバイト話し

近頃は電話ボックスを探すのも用意でない。たまに見かけると思い出すことがある。 〈ピンクチラシ張り付けバイト〉 『今晩お暇』等のピンクチラシを電話ボックスの中にベタベタ張る。 あるチラシに載っていた&#…

ベテランに

「行ってくるぜ!」 男は、憂い漂う渋い声で一言 「あなた、頑張るんだよ」 「わかってるよー」 男はおもむろに立ち上がると、昭和の面影漂う横顔を見せ “採血室”に消えていった (…

ある日曜日のこと

Y線の踏み切り近くで電車を撮ろうと待ち構えていたら 「すみません。国道16号線はどの方向でしょうか?」 親子と思われる父親の方から道を聞かれた。 (いま来た方向なのに) 「いま歩いてこられた方向に30…

今日この頃

「あーあ、何かないかなあ」 カミサン 「何かって、何よ?」 「何かだよ」 「天気がよくて、こんなできた女房がいて、何が不満なのよ」 「・・・でも……」 「でもってぇ?」 「何か……ないかなあ」 「バカ…

地震

あっ、地震だ! 変な時間に起こされちゃったなあ。 あれっ、あちらさんは図太くグーグー寝てる。 何か面白くないな。 「起こしちゃえ」 と、男は布団の上からゆすった。 すると 「○○さん」 と、しがみつい…

病院

「あなた、負けないで」 「負けるものか!」 力強く言った男は、 チョッと魅の受付嬢に、 自分では自信があると思っている横顔を向けながら、 採血室に入って行くのであった (今日も1回で採血出来るといいな…

令和元年も今日で終わり

カミサンが正月用の生け花を生ける 「おっ、いいね。綺麗だよ、でもすぐ枯れるからなあ。♪花の命は短くて~。人間でいうと美人薄命だ」 カミサン 「何で私永いんだろ」 ……そりゃー、例外もあるから…… 「え…