手をみる
寝てばかりいるといろんなことを回想してしまう。今日はバッちゃんの命日だ。だからかあ、あんなことを思い出したのは。あれは私が小学5年生のときだったな。
「バッちゃん。なんでジッちゃん手っこばっかり見でんだべ」
僕は入院しているジッちゃんの、付き添いをしているバッちゃんに聞いた。
「アツボウはまだちっちぇがらわがんなべけっど、ジッちゃんはなあ、手っこに、今までありがどなあって感謝してんだぁ」
それからしばらくして入院していたジッちゃんが亡くなった。
三ヶ月後バッちゃんも後を追うように・・・。そういえはバッちゃんも亡くなる前に手を見ていたっけ。
「あなたあ、最近よく手、見てるわねえ」
検診を終えた看護師さんが行ってしまうと、着替えを持ってきた女房が言った。
「ほら、今も」
完